社員の育児休業は、会社にとって「戦力が抜ける」心配がつきものです。しかし、育休をきっかけに来てもらった代替要員が、そのまま会社の新しい戦力になることもあります。今回は当事務所がサポートした事例をもとに、両立支援等助成金とキャリアアップ助成金を組み合わせた活用方法と、申請で気をつけたい点をご紹介します。

両立支援等助成金とは

仕事と育児・介護などの両立を支援する事業主に支給される助成金で、目的別にいくつかのコースがあります。今回の事例で活用したのは次の2つのコースです。

① 育児休業等支援コース

「育休復帰支援プラン」を作り、プランに沿って社員の育休取得と職場復帰を支援した中小企業が対象です。

  • 育休取得時:30万円
  • 職場復帰時:30万円

(2026年度の金額。無期雇用・有期雇用の社員それぞれ1人まで)

② 育休中等業務代替支援コース

育休中の社員の仕事を、ほかの社員や新たに雇った人・派遣社員がカバーした場合に支給されます。

  • 手当支給等:業務を代わりに担った社員に手当を支給した場合
  • 新規雇用:代替要員を新たに雇用(派遣の受け入れを含む)した場合。代替した期間に応じて9万円〜81万円

(2026年度から「1年以上」の区分(81万円)が新設されました)

キャリアアップ助成金(正社員化コース)とは

有期雇用やパート、派遣などで働く方を正社員に転換した(派遣の場合は正社員として直接雇用した)事業主に支給される助成金です。主な要件は次のとおりです。

  • 正社員にする前日までに「キャリアアップ計画書」を労働局に提出していること
  • 正社員への転換制度を就業規則などに定めていること
  • 正社員になった後6か月間の賃金が、その前の6か月間と比べて3%以上増えていること
  • 正社員として6か月分の賃金を支払った日の翌日から2か月以内に申請すること

当事務所のサポート事例(県内のA社様)

A社様では、総務・経理を担当する社員の方が、産休に続けて約1年間の育児休業を取得されました。

  1. 育休前:育休復帰支援プランを作り、本人と面談して引き継ぎの計画を立てました
  2. 育休中:同じ総務・経理の業務を派遣社員の方が代わりに担当しました
  3. 復帰前:本人と面談し、会社の現状や復帰後の働き方(時間外労働の免除など)を確認しました
  4. 復帰後:予定どおり職場に復帰されました

育休中の業務を担ってくれた派遣社員の方は、社員の復帰後も引き続き勤務されていました。仕事ぶりを評価したA社様と、A社様で働き続けたいという本人の希望が一致し、正社員として直接雇用することになりました。

  1. 正社員化の準備:キャリアアップ計画書を労働局に提出し、就業規則に正社員への転換・直接雇用の制度を定めました
  2. 面談・直接雇用:本人の希望を受けて面談を行い、正社員として直接雇用しました
  3. 6か月後:正社員としての賃金を6か月分支払った後、キャリアアップ助成金を申請しました

両立支援等助成金の受給額(合計127.5万円)

  • 育児休業等支援コース(育休取得時):30万円
  • 育児休業等支援コース(職場復帰時):30万円
  • 育休中等業務代替支援コース(新規雇用・派遣による代替):67.5万円

キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、現在支給申請中です。

育休を「人が抜ける」だけで終わらせず、育休を取った社員の職場復帰と、新しい正社員の確保の両方につなげることができました。複数の助成金を、時期をずらしながら段階的に活用した事例です。

申請で気をつけたいポイント

この事例では、労働局の審査の中で追加の説明や書類を求められました。実際に対応した経験から、特に注意したい点をまとめます。

1. 書類どうしの内容をそろえておく

派遣契約書やタイムシートは、両立支援等助成金とキャリアアップ助成金の両方で提出します。派遣会社が作る書類も、会社側で中身を確認しておくことが大切です。

2. 「同じ業務を代わりに担った」ことを証明できるようにする

組織図に個人名が入っていないと、育休中の社員と代替要員の業務が同じかどうか書類だけでは判断できません。業務内容や上司が共通であることを、申立書などで説明しました。

3. 休業期間中に出勤がないことを示せるようにする

産前産後休業中のタイムカード、賃金台帳、シフト表などで、休業中に勤務していないことを確認されます。

4. 面談の記録を残しておく

育休からの復帰前の面談や、正社員化の前の面談で何を話したかを記録しておくと、審査のときにそのまま説明に使えます。

5. 正社員化は「準備してから」

キャリアアップ助成金は、キャリアアップ計画書の提出と就業規則の整備が、正社員にする前に済んでいないと対象になりません。「正社員にしたい」と考えた時点で、実際に転換する前にご相談ください。

6. 申請期限と審査期間に注意する

各コースとも申請できる期間が細かく決まっており、1日でも過ぎると受け付けてもらえません。また、今回の両立支援等助成金は申請から支給決定まで4〜7か月ほどかかりました。入金までの期間も見込んでおきましょう。

助成金の申請は当事務所へご相談ください

両立支援等助成金もキャリアアップ助成金も、就業規則の整備や計画書の提出など、取り組みを始める前の準備が支給の条件になっています。「社員から妊娠の報告があった」「育休を申し出られた」「パートや派遣の方を正社員にしたい」という段階で、早めにご相談ください。

制度の内容は年度ごとに見直されます。最新の要件は、厚生労働省のホームページでもご確認いただけます。

▶ 両立支援等助成金(厚生労働省)

▶ キャリアアップ助成金(厚生労働省)

宮下社会保険労務士・行政書士事務所では、助成金の申請から就業規則の整備まで一貫してサポートしています。お気軽にお問い合わせください。